重村力先生から,以下の文章を頂きました。(新建築webに送信された文章とのこと)代理投稿:平田隆行
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都市計画がなって町が死んではだめ。
重村力
阪神を被災し、
インドネシアやスリランカの地震・津波被災地の復興に関わっていた
経験から今回即スマトラ級の地震が起きたと思いさまざまな心配が
あたまをよぎった。
地震による破壊の度合いは、報道や調査報告が少ない状況で
はっきりとはわからないが、以下のことが言える。
1高層・超高層が長周期に弱いことを露呈したが
幸い致命的な被害には至っていなそう。
2中層のRC建築物は耐震補強した物も含めて
阪神よりもつよい入力に対して相当丈夫になった。
3木造伝統建築は耐震補強が間に合わなかった物が多い。
4建築のサブ構造の総合的安全性は大いに問題を露呈した。
ブロック塀や天井などの仕上げ材支持構造=仙台駅・石巻空港
5あれだけ丈夫につくったはずの原発も建築構造的には
安全でもさまざまなポンプや配管サブ発電機などが弱ければ
どうしようもない。総合的安全対策がないし
電力会社の体質では安全は守れない
=原発という綱渡りは無理。
6津波は想像以上。
仙台市東部若林区や名取市の仙台空港などはもともと
開発すべきではない場所である。1973年に吉阪研究室で
つくった「杜の都仙台のすがた」=都市計画学会賞受賞
では仙台バイパス以東の開発を最小限に抑える計画だったが
結局市街化が拡大した。スリランカのように海岸線から
2㎞~5kmの開発規制をかけ
荒浜など既存集落には手厚い津波タワーなどの処置を
講じるべき。
ジャワ島のパンガンダラン津波を二日後の朝見たが
それとは比べものにならない強さ。
スリランカでも列車はこんなに流されてはいなかった。
7沿岸集落の津波対策はこれから
日本建築学会の集落研究者たちと調査に出かけるところだが
田老などのかみそり防潮堤は無惨に敗北した。
助かったのは台地や丘に逃げた人々で
建築ではRCの5階建て以上程度のホテルや病院などの最上階
(20m以上か)などで、南三陸町の重量鉄骨3階建て(ALC?)
防災庁舎屋上の手すりにしがみついて一人だけ助かった町長
がぎりぎり限界であった。
今後土手や津波タワーを用いて台地への10分避難路をつくり
公共的中層RCなどを分散配置する計画がのぞまれる
8復興はコミュニティ主体で
今回の窮状をみても合併自治体の頼りなさとコミュニティの
自助共助が目につく=阪神と同じ。今後の復興はコミュニティ
ベイストで進めるべきだ。
特に沿岸集落の社会的持続性
経済的持続性に重点を置いた復興をしないと日本の
魚食文化は滅びる。
神戸市長田区のように都市計画がなって町が死んではだめ。
東灘区酒造地区のように持続が大切。
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